LOST ウェイトターン制TRPG


聖域の守護者イメージ

聖域の守護者 22.絶壁

クラウス:「しーっ」と言って周りに静かにしてもらって「こっちです!」と声のするほうに進むんですが……ゼオルには何も聞こえない?

ゼオル:あれぇー? あれぇー? 調子悪いなー。

一同:(笑)。

GM:声のする南の方へ進むと、今までうっそうとしていた木々が一気に開けます。とは言っても霧が出ているので遠くまでは見通せませんが。声の方に近寄って行こうとするとアルトが「待て!」と声を発します。「その先は崖になっていたはずだ。慎重に進め」。進行方向の先からは「誰かいないの!?」とアルヴィの声がします。

クラウス:「もう皆にも聞こえるでしょう?」

GM:アルトはうなずいて崖の方へと進んでいきます。崖の縁まで進んで「アルヴィ!」と崖下に声をかけると、その声に反応して「アルト兄ちゃん!」とアルヴィの声が聞こえてきました。アルヴィの居るらしきところは十メートルも離れていないくらいでしょうか。霧のせいでぼんやりとなんですが人影が見えます。

 GMがアルヴィのカードをテーブルに置く。

GM(アルト):「大丈夫か!?」

GM(アルヴィ):「なんとか大丈夫だよ。でも動けないの」

ゼオル:「動けない? どこかに足を挟んだのか?」

GM(アルヴィ):「こんな崖とても登れないよ!」

ウィル:「ロープとかあるか?」

ゼオル:「俺が持ってるよ」(ロープを取り出す)

ウィル:「誰かにロープを括りつけて助けに行かせるしかないな」

クラウス:「私が行きましょうか?」

アンリ:「わたしが行きます! この中で一番わたしが軽いですし」

ゼオル:(アンリのキャラクターシートを見て)あれ? 俺、筋力でアンリに負けてる……。

GM:(装備の差もあるし、これはきっとゼオルの方が軽い(笑))。

ゼオル:登攀判定はシーフ技能を使うんですよね?

GM:シーフ技能があるなら、ロープを使って登攀するときには判定なしで成功するよ。シーフ技能を持っていない人は判定が必要。

ゼオル:「こういうのは得意だ。俺が行く」

GM:ロープはどこかに結びつける? くさびを地面に打ち込む?

ゼオル:崖っぷちの地面にくさびを打ち込むのは怖いな。「誰かロープの端を持っててくれ」

ウィル:「じゃあ、俺が持ってよう」

クラウス:「私は崖の縁に立っています。もしも落ちてしまったときのために」。ところで“フォーリング・コントロール”ってどうやって使うんですか? 瞑想しようとすると落下したときにかけるのは間に合いそうにありませんが。

GM:精神点を直接消費して唱えるか、あらかじめ瞑想してマナを蓄積させておくか――

クラウス:そうするくらいなら先に“フォーリング・コントロール”を掛けておきますよ。

GM:うん、それならあらかじめ掛けておくのがいいんじゃない?

クラウス:いや、ソード・ワールドRPGだと落下した瞬間に行動順を無視して掛けられるじゃないですか。

GM:精神点を直接消費して唱えれば同じことができるよ。精神力は足りるはずだよね?

クラウス:できますけど、それをしちゃうと三日間休まないと精神点が全快しませんよ。

GM:(三日間っていうのはオーバーだけど……)それが嫌ならあらかじめ瞑想してマナを貯めておけば良いんじゃない?

クラウス:“フォーリング・コントロール”は持続時間が90ウェイトあるんだから、瞑想して待ってるくらいならあらかじめ掛けてさっさと助けてこさせます。むしろ私が“フォーリング・コントロール”と“レビテーション”を使って下まで降りて戻ってきたほうが早い! でも、ゼオルの出番をこれ以上潰すのは可哀相。とは言っても、私的に瞑想して待機してるのも馬鹿らしい。うーん、どうしたらいいものか……。

 連続でゼオルの活躍の機会を奪ってしまったことで後ろめたさがあったのか、クラウスが少し混乱しています。ゼオルに登攀させつつも、もしもの場合にはちょっとした消費で“フォーリング・コントロール”を掛けられるという保険のある状況がクラウスの理想だったのでしょうが、そうそう都合どおりには行きません。

 ちなみに、ソード・ワールドRPGでは“フォーリング・コントロール”や“レビテーション”は人ひとりを背負った状態では効果を発揮しないそうです。“フォーリング・コントロール”は風船を空気で膨らませた状態、“レビテーション”は風船をヘリウムガスで膨らませた状態。ただし両者とも下方向以外の力に対しては本来の質量としてとらえると考えればイメージしやすいですね。LOSTでも特にこれらの魔法の効果を変更していないので同様の処理となります。

ゼオル:お前に任せてもいいんだぞ?

GM:ゼオルが無難に判定を成功させれば何の消費もせずに昇り降りできるけど。

クラウス:じゃあ、ゼオルが死にそうになって私が無駄に精神点を6点消費するという結末を見るとしましょうか。

ゼオル:俺を信じろ!(笑)

クラウス:悪いけど、何かあったら可能性を使ってくださいね(ぼそり)。

 可能性というのはLOSTオリジナルの能力で、失敗した判定をやり直したり、これから行う判定の成功率を高めるためのものです。使用回数が制限されており、その回数は決して回復しないので滅多なことでは使えませんが、ここぞというときに役に立ちます。

GM:ロープを使って降りる分には判定も必要ないんだし、アルヴィを抱えて登ることになれば判定をしてもらうことになるけど、その判定に失敗してもいきなり落下するわけではないから安心して。誰かが崖の上からロープを支えてくれるならその分のボーナスも加えるよ。

 LOSTでは登攀判定で失敗した後に落下判定を行い、その結果で数メートル落ちるのか、それとも一気に落ちるのかを決定します。ソード・ワールドRPGに比べると一気に地面まで落下する可能性はわずかなので、ある程度安心して任せられます。

ゼオル:精神点2点の消費で俺の出番を台無しにされるとか……黒魔法は恐ろしいわ(笑)。

GM:“フォーリング・コントロール”と“レビテーション”を使ってアルヴィを助ける展開も正攻法のひとつだよ。

ゼオル:だが、クラウスの無駄な精神点の消費を抑えるため、俺は身体を張ることにしたぞ。

クラウス:瞑想して待機するくらいならあらかじめ“フォーリング・コントロール”を掛けておいた方がいいんですから、瞑想もしませんよ。

ウィル:精神点と命が天秤にかけられてる(笑)。

ゼオル:大丈夫。楽勝、楽勝。失敗なんてするはずないだろ。

GM:では、ゼオルの身体にロープを縛り付けて、ロープの反対の端をウィルが持つ形で崖を降りていきます。ゼオルは順調にロープを使って六メートル程降りていきました。降りた先は岩棚になっていて、そこに小さくうずくまっているアルヴィの姿があります。

ゼオル:「よっ! 大丈夫か?」

GM(アルヴィ):(顔を上げて気丈に振る舞い)「……だ、大丈夫だもんね!」

ゼオル:「この前は間違えちまって悪かったな」

GM(アルヴィ):「えっ? 何のこと?」(外界人という理由で嫌っていただけで、女の子と間違われたことは特に気にしていない)

ゼオル:忘れてるのか? それならそれで都合いいが。「まあいい。よし、こっちにつかまれ」

GM:アルヴィはあなたにつかまろうとして手を伸ばしました。ただ、うまく立ち上がれません。

ゼオル:それじゃ、こちらからアルヴィを抱えるようにして――

GM:「あっ、駄目だよ!」と言ってアルヴィはゼオルから離れると胸元のポケットを開けます。すると、そこから子リスがでてきました。黄金色の毛をしたクロリスです。

ゼオル:ゴールデンなのにクロリスなんだ?

GM:黒色のクロじゃなくて、クローディアのクロだよ(さらり)。

ゼオル:なるほど。そっちだったのか。

GM:クロリスを頭の上に乗せると、ようやくアルヴィはあなたにしがみつきました。

ゼオル:「まったく、クロリス探してこんなところまで来ちまうんだからな。やんちゃな奴だ」

GM:では登攀判定です。シーフ技能レベル+敏捷度ボーナス+2Dで成功すれば一メートルずつ登っていけます。

ゼオル:(ころころ)あら? 10。

GM:それは失敗ですが、今は岩棚に足がついている状態なので特に落下とかはありません。ウィルにロープを引き上げてもらう?

ゼオル:それはプライドが許さん。(ころころ)13。

GM:上昇、一メートル。

ゼオル:(ころころ)14。

GM:上昇、二メートル。

ゼオル:(ころころ)15。

GM:上昇、三メートル。そこでストップ!

一同:なんだ?

ウィル:(察知して)まさか……。

GM:(そうだよね。十分想定できたはずなのに、ちょっと無警戒すぎたよね)。

 ちなみに、ゼオルはアルヴィを抱きかかえると言っていますが、ウィルに引き上げてもらっているのではなく、ゼオル自身が補助ロープを使って登攀で崖を登っているので実際にはアルヴィを背負っているのでしょう。脳内変換、脳内変換。このTRPGリプレイはこんなところも修正せずに赤裸々にお送りしています。




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