LOST ウェイトターン制TRPG


聖域の守護者イメージ

聖域の守護者 24.救出

 パーティーの中で最も回避能力の低いアンリがクロスボウの集中砲火線上に移動したことで、GMに戦慄が走ります。しかし、ここで手控えてしまい狙いに行かなかったら嘘でしょう。GMは心を鬼にして集中砲火を決意しました。そのとき……。

GM:続いてクラウスの番です。

クラウス:ちなみに、もうわかると思うんですけど、騎士Aはサディアスですか?

GM:(すでにウィルが声で確認済みだけど……)違いますね。下級騎士四人で構成された斥候部隊のようです。

クラウス:(戦闘マップを指差して)では、ここを起点として“ダークネス”を唱えます。(ころころ)発動。

GM:うわっ! 一気に見えなくなった。

 クラウスは自分から二十メートル離れた場所を起点として、敵を包む範囲で起死回生の“ダークネス”を唱えました。ところが、これはルールミスです。“ダークネス”は術者から十メートル以内を起点として半径十メートルの範囲を闇に包み込む魔法です。本来であれば届かないはずでした。

 アンリを死なせてしまいそうな状況でそれを阻止する魔法がタイミング良く掛けられたことと、GMが一番慣れている別のシステムでは“ダークネス”の射程距離が長いことから、まったく違和感を感じずにミスを見逃していました。ただ、仮に“ダークネス”を本来の有効射程内に掛けていたとしてもこの後の戦況に然程違いが発生していたとは考えにくく、致命的なミスでなかったことは幸いでした。

GM:続いてアルトは弓矢を構えようとするんですが……「この闇は消すのか?」とクラウスに聞きます。

クラウス:「いったん態勢を整えましょう」

GM:であれば、アルトは矢をつがえて射撃の準備をします。続いて戦士Bが通常移動で横に動いて闇の外へ出ようとします。その次はウィルです。

ウィル:さっきと同じようにロープを持ち上げます。もうゼオルの姿も見えてるんですよね?

GM:見えてます。

ゼオル:直ぐ近くまで来てる。あと一回判定成功させれば上がれる。

ウィル:背後なので見えないんですが、クラウスが“ダークネス”を使ったことは詠唱内容からわかりますか?

GM:たぶんわかるでしょう。

ウィル:では下にいるゼオルに「クラウスが“ダークネス”を使った。場合によっては盲撃ちで矢が飛んでくるかもしれないから、子供をかばってやってくれよ!」と言いながらロープを持ち上げます。

ゼオル:「ああ、わかった!」

ウィル:(ころころ)あー、すみません12です。

GM:残念。それでは現状維持のままです。続いて騎士Aが、「いったん闇からでるぞ!」と言って全力移動で“ダークネス”の範囲外にでます。次はアンリの番です。

アンリ:瞑想3ウェイト。

GM:その次は闇から出るために騎士Cが右に動くか左に動くかですが……(ころころ)右に通常移動で“ダークネス”の範囲外にでました。続いてゼオル。

ゼオル:登攀。(ころころ)12……だと?

GM:またしても現状維持です。あと一歩のところに来て足踏みが続きますね。

ゼオル:うーん。

GM:ここで可能性を使えば。

ゼオル:いや、それはさすがに……。

クラウス:これが使ったら二度と回復しない可能性と一日一回使える“ラック”の差です。“ラック”だったら百パーセント使ってますよ。

GM:続いてクラウスどうぞ。

クラウス:うーん、これはもう一回“ダークネス”かな。とりあえず瞑想1ウェイト。

GM:連続してクラウスの番です。

クラウス:ここを起点に“ダークネス”を……(ころころ)発動。

 ふたつの“ダークネス”によって、崖先にいるPCたちと反対側にいる敵とがほぼ完全に分断されてしまいました。

ウィル:酷い(笑)。

アンリ:この魔法使い嫌過ぎ(笑)。

ゼオル:ほんと、地形潰し強いな。

GM:アルトは待機を続けます。

クラウス:“ダークネス”を抜けてきたら抜けてきたで殴りあいに持ち込めますからね。

GM:続いてアンリどうぞ。

アンリ:「戦う力を!」“ブレス”を唱えました。

クラウス:どんな効果でしたっけ?

GM:攻撃力+1です。

クラウス:ディフレクト値も上がるんですか?

GM:ディフレクト値は上がりません。

ウィル:全員ですか?

GM:はい。アンリの周囲十メートル内にいる者は敵味方問わずかかります。

クラウス:そろそろ自分の傷を癒そうかな。でもたしか“リプレニッシュ・ヘルス”の方が効率良いんですよね……。

GM:続いてウィルどうぞ。

ウィル:今度こそなんとか引っ張りあげたいな。(ころころ)15です。

GM:オッケー。それで崖の上までゼオルとアルヴィを引き上げることに成功しました。

ウィル:「すまんなゼオル。こっからまた一仕事だ」

ゼオル:「構わんさ」

クラウス:「任せましたよ……」と声に力がない感じです。肩口に矢が刺さっています。

GM:次はゼオルどうぞ。

ゼオル:さてと。まずはレイピアとダガーを装備します。

GM:続いてクラウス。

クラウス:瞑想2ウェイト。

GM:では、騎士Aの番ですが……。(もう射撃戦は行えないし、前衛の二人が復帰しちゃって正面からでは勝ち目がないからな)。「もう十分だ。撤退するぞ! 隊に戻って報告だ」と言いました。

アンリ:何?

クラウス:「これはいけませんね」

GM:そういえば言い忘れていましたが、この戦闘の勝利条件は「アルヴィを救出せよ!」ですので、この時点でこの戦闘での勝利条件はほぼ満たしてますね。

一同:(安堵)。

GM:続いてアンリどうぞ。

アンリ:瞑想5ウェイト。

GM:その次にアルトが行動します。闇から出てきた戦士Cに矢を放ちました。「逃がすものか!」。戦士Cはクロスボウ装備中でディフレクトするための得物を持ってないので、回避を試みます。

アンリ:迂闊な奴め。

GM:アルトの射撃をそうそう避けられるはずもなく、致命傷は免れましたが騎士Cに矢が深々と刺さりこみました。騎士Aから「何をやっている! 迅速に撤退しろ!」と声があがります。さて、ここから騎士たちは全力で撤退を開始しますが阻害しますか? 深追いしないようであればこの段階で戦闘を終了させますが。

一同:深追いはしません。

クラウス:その代わり、予定していた“キュア・ウーンズ”を唱えます。(ころころ)全快。

ゼオル:プリースト技能1レベルあると違うよな。“トランスファー・メンタルパワー”も使えるし。

GM:では、金属鎧の音を響かせながら騎士たちは撤退していきました。こうしてあなたたちは敵兵を追い払うことに成功しました。

 BGMが穏やかで温かみのある曲に変わる。

GM:アルヴィはアンリの顔を見ると安心したのか「うわーん、姉ちゃん!」と言って抱きついて泣きじゃくります。「怖かったよー」

アンリ:「馬鹿なんだから、本当にもう」と言ってアルヴィの頭をなでて髪をクシャクシャにして、かく言う自分も泣きはじめてしまいます。

GM:そんなアルヴィの肩に乗り「キュゥ、キュゥ」と鳴きながら小首を傾げてるクロリスの姿があります。アルヴィもしばらく泣くとやがて落ち着きを取り戻し、小さな声でアンリに「オイラてっきり外界の人間って悪魔みたいに怖い奴らなのかと思ってたけど、全然そんなことないね」と言って、ウィルたちに目を向けます。

アンリ:「だから言ったでしょ? この人たちはわたしたちを助けに来てくれたのよ」

GM(アルヴィ):「そうだね。あの人の……」と言ってゼオルを見て「あの人の手、大きくて温かかった。オイラたちと変わらないね」

アンリ:「当たり前じゃない。同じ人間なんだから……」(まるで自分に言い聞かせるように)「住む場所が違うだけで、心だって、形だって神様が作った同じ人間よ」

クラウス:「感動のご対面のところ申し訳ありませんが、急いで撤収しないと敵が仲間を連れて戻ってきかねません」

ゼオル:「そうだな」

クラウス:闇を消すのは精神点がもったいないのでこのままでいいかなと思いますが。

GM:一日たてば消えるので問題ないでしょう。こうして戦いを終えたあなたたちは先行するクローネの民の本隊と合流して、無事に聖域の奥にある大人数が休めるだけの広さをもった神殿へとたどり着いたのでした。

アンリ:今回の戦闘はクラウスの魔法のおかげで凄く助かったね。

クラウス:“ダークネス”はこれまでの展開でGMから使えと言われているような感じがしましたからね。

GM:あそこで“ダークネス”を選択したのは大正解だよ。さすがに彼らも“ダークネス”を突破して接近戦を挑む危険は冒せなかった。(そして、実はその必要もなかったんだよね)。

 おまけ:戦闘の流れ(Flashで再生されます)




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