LOST ウェイトターン制TRPG


聖域の守護者イメージ

聖域の守護者 27.再会

GM:それでは、クローネの民の退避から数日が経過した頃、エルモ長老の下へ聖域の奥で警備を続けるクローネの戦士から侵入者ありとの報告が入ります。それとほぼ同時刻にクラウスは自分の使い魔の反応に気がつきました。使い魔の視界が共有されます。SIRENの視界ジャックのような感じですね。ジジジジジ……。使い魔の視界から見えるのは長い黒髪、ふくよかな胸、身にまとったローブ。

クラウス:ん? ご本人?

GM:そのようです。そして、その周りには数人の護衛兵たちと、さらにその外を囲って対峙するクローネの戦士たちの姿も見えます。クラウスの使い魔を連れたカーライル女男爵はクローネの戦士たちに取り押さえられ、連行されます。

 GMがカーライル女男爵のカードを提示する。

クラウス:カーライル女男爵の使者のラッツではないですよね?

GM:違うようです。

ゼオル:ラッツは?

クラウス:実はカーライルはラッツという二つ名で活動していました?(笑)

GM:そういうわけではありません。カーライル女男爵はエルモ長老のところまでクローネの戦士たちに連行されてきました。そして、あなたたちもその場に呼ばれます。

 GMがエルモ長老アルトのカードを提示する。

 先行きに不安を感じさせるBGMが流れる。

GM:皆が集まったところでカーライル女男爵がこれまでの経緯を話しはじめます。

GM(カーライル):「すみません。使者を来させるつもりだったのですが、ラッツが行方不明になってしまい連絡が取れなかったため、わたくしが直接来ることにしました」(少し言いにくそうにしてから)「あの後、大公の聖域侵攻に関して、国王陛下に直談判したのですが……残念ながら、良いお返事は頂けませんでした。陛下は聖域に正規兵を向かわせることをお許しにならなかっただけでなく、穏健派が強硬派と武力衝突することも禁じられました。陛下はオルコット大公の私兵による聖域侵攻に対しては傍観なさるおつもりです……。力不足でごめんなさい……」と言って頭を下げます。

ウィル:「では、オルコット大公の所業をこのまま見過ごせと、国王陛下はそう仰るわけですか!?」

GM(カーライル):その言葉に何も返すことができず、消え入りそうに身を小さくします。「陛下の命を受けて、穏健派の有力者たちも今後の活動を控えると言ってわたくしの下を離れていきました」

ウィル:ということはレイフィールド国王にとって今回の聖域侵攻は成功しても失敗してもどちらでも構わないということなんですね?

ゼオル:あくまでオルコット大公の私兵だしね、みたいな。

GM:王、我関せず。

ゼオル:でも、身内では争うなよと。

ウィル:そうなんだよね……。

GM:つまりここでカーライル女男爵が自分の私兵でオルコット大公を止めてみせるとか言い出すと、王命に逆らったということで罰せられるわけですね。

クラウス:「まあ、レイフィールド国王陛下らしいお裁きですね」

ウィル:(少し怒気をはらんだ声で)「国王陛下らしいってどういうことだよッ!?」

クラウス:「もともと陛下は温和な人柄で、たいへん慎重な方です。治世ではたいへん良い政治を行う方だと思いますが、いまのような乱世では……。陛下に対してどんな噂がたっているかはウィルも知っているでしょう?」

ウィル:「それはッ!」

GM:小心者で優柔不断。

ウィル:「……そうだが……」

GM:それでいて頑固者。

ウィル:そりゃ、オルコット大公も厄介な王だって言うよなぁ(笑)。

アンリ:あなたの苦労が今わかったよオルコット(笑)。

クラウス:「このような事態にどのような裁きを下されるかは……ある程度私が想像していた通りでしたが、残念でもあります」

ゼオル:「なら、どうするんだ?」

ウィル:「俺は嫌だぞ! クローネの人たちが俺たちの言葉を信じて、自分たちが守らなくてはならない遺跡を離れてまで退避してくれたんだ。いまさら陛下の命令だからといってクローネの人たちをこの場において後は知らん顔するだなんて、そんなこと俺にはできない!」

クラウス:「まあ、ウィルの性格だったら、それはできないでしょうね……」

ゼオル:「だからってこのまままともにやりあうつもりか? 少し頭を冷やせ」

クラウス:「このままオルコット大公の私兵と戦うと王命に逆らうことになりますね。王命に逆らうつもりですか?」

ウィル:穏健派は血判状とかを作ってるわけではないんですよね?

GM:ないですよ。カーライル女男爵などの有力者は当然特定されるでしょうが、それ以外のあなたたちのような末端の者たちまでは特定できません。

ウィル:「幸い俺は騎士でもなんでもない」

ゼオル:痛い(笑)。

クラウス:そんな自分を貶めなくても(笑)。

ウィル:いやいや。「しかし、だからこそ騎士にはできない働きができると俺は信じてる」

クラウス:「それが今ここでクローネの民を救うこと……というわけですか」

ウィル:「救えるかどうかはわからない。でも、やれるだけのことはやりたいんだ」

クラウス:「いったい何をするつもりです?」

ウィル:チラリとアンリの方を見た。

ゼオル&クラウス:(苦笑)。

アンリ:笑顔です。「長老、お話しを聞いておわかりになられましたよね? わたしがどうして彼らを選んだか」

GM(エルモ長老):うなずいた。

アンリ:「ありがとう皆さん。もう一族の者は誰も反対しないと思います」

GM(エルモ長老):「ここまで言われてはな」

アンリ:じっと三人を見ました。「あらためてお願いします。わたしの守護者になるために試練を受けてください。そして、わたしを守ってください」

GM:その言葉を聞いてアルトが辛そうにうなだれ、視線を下に落としました。ギュッと手を握っています。

ウィル:あ、そうか。アルトは数に入ってないのか。

アンリ:ないです。

ゼオル&クラウス:入れてあげて(泣き真似)。

ウィル:なんかアルトとアインに申し訳ないな。

GM:(アインに関してすでにどちらの実力が上なのかは確認済みだから本人も納得してるだろうし、アルトの反応はそういうことじゃないんだけど、ここで言ってしまうとネタバレになるからしばらく勘違いしててもらおうか……)。

アンリ:「深淵の力を使う理由は決まりました。あの者たちから聖域を守るためです。深淵の力を使うことにためらいはありません。しかし、少しだけわたしに時間をください。よろしいですか長老?」

GM(エルモ長老):「うむ」

アンリ:「約束を果たさなければならないのです」

GM(エルモ長老):「約束?」

アンリ:「メイ。お久しぶりです」

GM:頭を下げていたメイもその声に顔を上げました。

GM(メイ):「大きくなったのね」(喜びの表情から悲しげな表情に変わって)「……助けになれなくて、ごめんなさい」

アンリ:「とんでもない。あなたの想いは――」(ウィルたちを見て)「こうして届き、そしてわたしたちは救われました。あなたにはどんなに感謝しても足りないくらいです。ですから、せめてもの感謝の気持ちを……。さあ、一緒に来てください。わたしはあなたに教えなくては。あのときあなたにあげたクッキーの作り方を……」

クラウス:味のしないクッキー(笑)。

GM:でも、あのときのメイにはとても美味しく感じられたクッキー。




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