GM:シン・デーモンがマナを二倍消費して“プロテクション”を自分とファット・デーモンにかけます。
クラウス:それはずるくないですか? ずるいー(笑)。
GM:ずるくない、ずるくない(笑)。
クラウス:私も魔法の対象を拡大する能力が欲しい!
アンリ:なんで敵だけ使えるの?って感じだよね。
クラウス:そんな感じですね。
GM:いやいや、あなたたちも魔法スキルでメディテイトを取得せずにプルーラルを取得しておけば対象の拡大はできたんですよ?
クラウス:と言うことは、デーモンはメディテイトを取得したうえで、プルーラルも取得してるってことですか? つまり、ソーサラー技能4レベル以上?
GM:シン・デーモンがメディテイトを取得しているとは限らないですよ。とりあえず、効果対象を増やして魔法を使ったってことしかわかりません。
クラウス:だって、瞑想2ウェイトして二対象に“プロテクション”を掛けたということは……。(しばらく考え込む)。
ちなみに技能レベルとスキルが連動しているわけではないので、ソーサラー技能が4レベル以上であるとは言い切れず、魔法を使うときに直接精神点を消費していた可能性もあるので、瞑想2ウェイト云々の推測も成り立ちません。
アンリ:“ブレス”を唱えます。(ころころ)発動。
GM:(意味ありげに)あっ、発動時の魔力を控えておいてもらえますか?
クラウス:こいつら“ディスペル・マジック”も使ってくる気か?
GM:(さて、どうだろうね。でも、それを予感させるだけでも緊張感がでてくるでしょう?(笑))。
GMの思惑通り、剣を交えずしてプレッシャーを与えることには成功したようです。徐々にその力を垣間見せるデーモンたちにPCたちは抵抗を試みますが……。
クラウス:(戦闘マップを指差して)では、ここを起点にして“サイレンス”を唱えます。
一同:おおっ!
クラウス:とりあえず“サイレンス”の範囲内に入れてしまえば、抵抗されてもその場では魔法を唱えられなくなりますからね。
GM:(うーん。それは、ルールを誤解してるな。抵抗に成功すれば声は出せるし魔法も唱えられるんだよね)。
クラウス:(ころころ)魔力14。
GM:シン・デーモンは抵抗に成功しました。ファット・デーモンも抵抗に成功しました。
クラウス:でも、これで祭壇の上は魔法を唱えられない空間ですね。
GM:えーと、残念ながら“サイレンス”の範囲内でも抵抗に成功した者は魔法を唱えられます。
アンリ:あ、そうなんだ?
クラウス:なにぃ? 「駄目か……」
ウィル:クロスボウの矢を装填します。
GM:ちなみにボウと違ってクロスボウは装填したあと動けますからね。
ウィル:これが文明の力。啓蒙の光だ!
ゼオル:クロスボウ、面白そう。
瞑想と強化魔法を繰り返すデーモンたちに矢を放つウィルとゼオルですが、回避しないファット・デーモンに対してゼオルが威力の弱い矢を放ち、その防御力の前に弾かれ、回避力の高いシン・デーモンに対してウィルが威力の強い矢を放ち、あっさりと避けられるなど、ちぐはぐな攻撃が続き、その間にデーモンたちは強化魔法をあらかた唱え終えてしまいました。
この間、デーモンたちの唱えた魔法は両デーモンに対する“カウンター・マジック”、シン・デーモンへの“ファイア・ウェポン”、ファット・デーモンへの“リプレニッシュ・ヘルス”。それに対してPCたちの唱えた魔法はウィルへの“シャープネス”とゼオルのショート・ボウに対する“ファイア・ウェポン”、ウィルの剣に対する“ホーリー・ウェポン”、そしてゼオルに対する“シャドウ・ボディ”。これから接近戦が始まることを考えれば、ゼオルのショート・ボウへの“ファイア・ウェポン”はあまり効果がなく、“ホーリー・ウェポン”に至ってはデーモンには効果がありません。戦闘準備の差は歴然です。そして、ついに準備を終えたシン・デーモンが全力移動でPCたちに迫ってきました。
(追加)途中でもそれとなく触れていますが、LOSTではレベルアップに伴い自動的に魔法を覚えるのではなく、各魔法毎に習得していく必要があります。キャラクターシートを見るとわかりますが、実はアンリは“ホーリー・ウェポン”を習得していません。
ウィル:仕方ない。武具換装でグレート・ソードを構えます。
GM:うーん、近接戦闘武器を構えられたか。あと少し遅ければウィルの横を通り抜けて後衛に攻撃できたのに。目標を変更して、シン・デーモンは全力移動でゼオルに隣接。
ゼオル:ぎゃーっ! シン・デーモンに矢を放つ。(ころころ)15!
ウィル:それなら当たる! 当たる!
GM:余裕で回避(笑)。
ウィル&ゼオル:えーっ!(驚愕)
ウィル:15を余裕で……回避……。シン・デーモン、やばいな。
両軍ダメージなしなのに阿鼻叫喚の図。GM冥利に尽きる光景です。
ここでクラウスが立て直しを図るべく作戦を提示します。
クラウス:個人的には博打でシン・デーモンに攻撃を当てて早めに倒して欲しいですね。ファット・デーモンには“リプレニッシュ・ヘルス”もかかってますし、後回しにしたほうが良いと思います。
アンリ:白魔法使いと黒魔法使い、先に倒すとしたらどっち? ……黒魔法使いでしょう!
クラウス:シン・デーモンは軟らかそうなので、まぐれ当たりすれば倒せるような気がするんですよ。なのでウィルにはシン・デーモンに接敵して倒すことに専念してもらえればと思います。
“サイレンス”の失敗により、一時は意気消沈していたクラウスでしたが、どうやら落ち着きを取り戻したようです。読みはほぼ当たっており、あとはそれを実戦するために有効な戦術を取るだけです。
作戦にしたがってアンリがゼオルの攻撃精度をあげるため“シャープネス”を唱え、ウィルとゼオルでシン・デーモンを挟み撃ちにします。しかし、シン・デーモンの速さは尋常じゃありません。そして、デーモンたちもPCたちと同じように防御力の低いゼオルにターゲットを絞り……。
GM:シン・デーモンがゼオルに攻撃。
ゼオル:回避専念。19。
GM:ギリギリ回避できました。
ゼオル:ギリギリ!? 駄目だこれー!(悲鳴)
ウィル:シン・デーモンの側面から大武器攻撃。
GM:シン・デーモンは方向転換してウィルに正面を向ける。
ウィル:当てればいいんだよな。当ててしまえばどうということはない!
GM:当たらなければどうということはない!(笑)
ウィル:(ころころ)16。
GM:ディフレクト……失敗。
ウィル:おっ、当たった!
一同:おおっ!(喝采)
先に攻撃を決めたのはPCたちでした。しかし……。
クラウス:“ホーリー・ウェポン”は有効ですか?
GM:うーん、今回出しているデーモンはオリジナル・モンスターだし、どうしようかなと思ってたんだけど、ソード・ワールドRPGってデーモンに“ホーリー・ウェポン”って効くんだっけ?
クラウス:シチュエーション的には有効でもいい気はするんですが……。(ルールブックを調べて)対象はアンデッドとしか書いてありませんね。
GM:それじゃ、今回は効果なしということで。
ウィル:残念。(ころころ……ダイスの目は1ゾロ)うわぁー!
一同:あぁー(落胆のため息)。
女神クローディアに見放されたのか、流れは悪い方へ悪い方へと向かい……。
GM:ファット・デーモンがゼオルに大武器攻撃。
ゼオル:回避専念、側面受け。
GM:あれ? 正面向かないの?
クラウス:さっき方向転換してからまだ自分の順番が回ってきてないんで、方向転換できないんですよ。
GM:ああ、なるほどね。
ゼオル:だが、任せろ! (ころころ)17!
GM:あっ、それはピッタリ命中。
ゼオル:えーっ!? うわぁぁぁっ!
クラウス:回避専念したのに!
GM:(ノートPCの画面に表示された数値を確認して)これは一発で逝くかもしれないね……。21点ダメージです。
ゼオル:うえぇぇぇっ!?
しばらく絶叫。
ゼオル:21点ダメージは……逝きました……。
アンリ:え?
ウィル:ダメージ減少入れても駄目?
ゼオル:ダメージ減少は4点で、生命点-2。
クラウス:どうしようもありませんねこれは。
GM:正面向けられていれば回避できてたんだけどね……残念。
痛恨の一撃。参加者の脳裏に「全滅」の二文字がよぎります。
運が悪かった部分もありますが、この状況に至った要因としては悪手を重ねてしまったことの方が大きいでしょう。こんなときには手を抜かずに叩き潰すのがわたしのマスタリング方針です。予定調和の勝利が約束されているくらいなら最初から描写だけで戦闘を済ませてしまえばいいのだ! GMは非情にも全力でパーティーを全滅させるべく、次の一手を考えるのでした。