LOST ウェイトターン制TRPG


聖域の守護者イメージ

聖域の守護者 33.画策

GM:一方、ウィルたちが試練を受けている頃、聖域の少し入ったところにて。ズンズンズンズン……と馬を連れた一団が進んでいきます。

 BGMは怪しげな行進曲。

 GMがオルコット大公ベネット伯のカードを提示する。

GM:ベネット伯が先頭を進み、その後ろの馬上にはオルコット大公がいます。オルコット大公の周りには黒い甲冑に身を包んだ騎士が四名ほど付きしたがっています。進行方向としてはクローネの民が暮らしていた集落に向かっているようです。

GM(オルコット):手で羽虫を払いながら「なぜわしがこんなところまで赴かなくてはならんのだ!」

GM(ベネット):(オルコット大公の様子を見て)「はっはっは。致し方ありませんよ。わたくしが掴んだ情報では、穏健派が聖域侵攻を止めるため大公暗殺を画策しているということですから。ならば王都や大公領に居るよりもあなたの私兵の居るここに来たほうが安全というものです」

GM(オルコット):「クローネの民は危険ではないのか?」と心配そうな表情を浮かべる。

GM(ベネット):「報告ではクローネの民は聖域の奥深くまで逃亡しております。それに深淵の力はすでに抑えていますから万が一にも大公の身に危険がおよぶことはございませんよ」

GM(オルコット):「ふんっ! 貴公、いざとなったら身を呈してでもわしを守るのだぞ! もし、このわしに傷ひとつでも負わせて見ろ。一族郎党が路頭に迷うことになるぞ!」

GM(ベネット):笑った顔を前方に向けるとそれが冷徹な表情に変わり、(声色だけは陽気なままで)「ご冗談を」と言いました。

GM:オルコット大公の一団がクローネの民の集落に入ってきます。クローネの民が退避したことでもぬけの殻となっていた集落は強硬派に占拠され、聖域侵攻の拠点として使われています。集落に入ってきたオルコット大公の一団を騎士サディアスと数少ない私兵が出迎えました。

 GMがサディアスのカードを提示する。

GM(サディアス):膝を着いて頭をたれ「オルコット様。こんな辺境までご足労いただき恐縮です」

GM(オルコット):「挨拶はよい。それより首尾を報告せよ」

GM(サディアス):「はっ! クローネの民は五日前に聖域の奥まで撤退した模様で、その後交戦はしておりません。その間、我々は聖域外周の遺跡探索を行い……」と言ってそばにある天幕の入り口を開けて、その中の床に敷かれた布を捲りあげます。「ご覧ください。これほどの成果を得ております!」

GM:サディアスの捲った布の下には、剣や盾、指輪などの魔法の品々が並べられています。

GM(サディアス):「ただいま研究者に鑑定させている途中ではありますが、たとえばこれなどまさに軍用品に相応しいものです」

GM:サディアスが指輪ひとつ手に取って指にはめると、その手を天にかざして「炎よ!」と唱えました。手をかざした先で火炎球が爆発します。

GM(オルコット):「おーっ! これぞ神の力! しゅごいー!」

クラウス&アンリ:しゅごいー!(笑)

GM(オルコット):「それをよこせ! それはわしが使うぞ、サディアス!」と言ってサディアスの指からその指輪を奪い取り、その指輪をしげしげと眺めた後にサディアスに向かって「貴様にはその剣と盾をやろう。その力を存分に振るうがよい。ベネット卿、そなたも何か欲しいものはあるか? それ、この剣などどうだ?」

GM(ベネット):「いえ、わたくしはこの剣が手になじんでおりますので……」。背に掲げた大振りのバスタード・ソードの柄を手で握り、「どうもこいつじゃないとしっくりこないんですよ」

GM(オルコット):「ふんっ! 本当につまらぬ男だな」。(他の魔法の物品を手に取りつつ)「おー、サディアス、これなどどうだ? ほほう! これなど凄いではないか!」などと言ってオルコット大公は目の色を変えて満足そうにしています。

GM:サディアスがオルコット大公から渡された剣を鞘から抜き放つと、シャラシャラシャラと冷気のきらめきが刀身の周りに広がります。その剣をサディアスが軽く振ると、シャリン、シャリンと大気が凍てつきます。そして、もうひとつ渡された盾ですが、その盾には魔法の紋様が描かれており、その紋様がぼんやり光を放っています。

GM(サディアス):「必ずやご期待にお応えいたします……」

ゼオル&クラウス:しゅごいー! これはしゅごいー!(笑)

 プレイヤーに敵NPCの立ち位置を含めた背景を伝えるための一幕だったのですが、「しゅごいー!」のインパクトが強すぎたのか、ゼオルとクラウスは主にそっちに気を取られているようでした。

 深淵の力と守護者の能力、ゼオルの請けた裏の仕事、オルコットとベネットの立ち位置など、ここまで公開されてくるとプレイヤーは物語の裏表までおぼろげに把握できるようになり、エンディングまでの道筋が幾通りか見えてきているはず……と予想していたのですが、はたして……。




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