厳かな神前を思わせるBGM。
GM:場所は再びクローネの民が退避しているクローディアの神殿です。あなたたちの目の前にはエルモ長老とカーライル女男爵、そしてアルトが居ます。
GM(エルモ長老):「無事に試練を乗り越えたようじゃな」
アンリ:笑顔でそれに答えます。
GM(エルモ長老):「アンリの見る目はたしかだったということか。これからの話しもあるが試練の疲れもあるじゃろう。女たちが食事を用意しておるからそれを食べたら今晩は早めに休むがよい」
クラウス:ええ、それは喜んで休ませてもらいます。
GM(エルモ長老):「アンリ。すまんが少しだけ残ってもらえるか?」
アンリ:「はい」
GM:そうすると、サンディが「ではこちらに」と言ってウィルたちを食事を用意してある場所へと連れて行ってくれます。カーライル女男爵もウィルたちと一緒にその場を出て行きました。残されたのはエルモ長老とアルト、そしてアンリの三人です。
暗めの重いBGM。
GM(エルモ長老):「して、すでにあの者たちに守護者の果たすべき使命は伝えたのか?」
アンリ:「いいえ」
GM(エルモ長老):「そうか。いつ話すつもりじゃ?」
アンリ:「わたしたちと彼らの目的が達せられてからでいいと思いました」
GM(エルモ長老):「なるほど。あの者たちが本当のことを知れば深淵の力の解放を止めるやもしれんからな。ときが来るまでは黙っておいたほうがよいかもしれんの」。そう言って深くうなずきました。
シーン外のクラウス:なんだとー?
GM:それだけ確認できればこのシーンは終了です。そして、皆が夕食を取り、一晩の休息を取ることができました。
クラウス:一晩? 一晩の休息!?
GM:そうですね(苦笑)。
クラウスから休息時間が足りないとの猛アピールです。
本来であれば徐々に消費されていく精神点の運用を楽しめるようにバランスを調整していたのですが、守護者の試練で予想以上に消耗してしまったのでここで救済処置を入れることにしました。
GM:わかりました。ではウィルたちが休んでいるところまでアルトがやってきます。
GM(アルト):「ちょっといいか?」
クラウス:「どうしました?」
GM(アルト):「無事に守護者になったようだな」
クラウス:「そのようですね」
GM(アルト):頭を下げた。「アンリのことをよろしく頼む」
ゼオル:「こっちこそ、役目を奪ってしまったようですまない」
GM(アルト):その言葉に首を傾げて、「ん? どういう意味だ?」
ゼオル:「俺たちがこなければ他の者が守護者になっていたんだろ?」
GM(アルト):「まあ、そうだな」(なぜ微妙に核心を避ける? こっちから察したことにしないとダメなのか?(笑))「なるほど、そういうことか。俺はもとからアンリの守護者になる資格はないんだ。先代の守護者だったからな」
クラウス:「なるほど……」
ウィル:「先代というのは?」
GM(アルト):「先代というのは当然アンリの前の御子という意味だが……」(どう言ったらいいか悩んでから)「俺の大切な人だった」
ゼオル:「だった……?」
ウィル:「その方はもう居ないのか?」
GM(アルト):「ああ」
ウィル:「では十数年前の聖域侵攻を防いだというのがその先代の?」
GM(アルト):「そうだ。先代の御子とともに俺は外界の兵と戦った。俺たちの力及ばず御子は深淵の力を解放することとなり、その力をもって外界からこの聖域を守ったんだ」
ウィル:「力及ばず?」
GM(アルト):「俺たちはできることなら深淵の力は使いたくない。だから、御子に力を使わせないためにクローネの戦士たちは自らの力を振るう。だが、外界の力は思った以上に強く、俺たちの力だけでは防ぎきれなかった……。そういうことだ」
ウィル:「深淵の力とはどういうものなんだ?」
ここでアルトに深淵の力に関して答えさせてしまうと、今後の流れを誘導してしまいかねません。この情報をどこまで公開するかはアンリのプレイヤーにとっての楽しみであるはずです。悩んだ結果、黙秘権を行使することにしました。
GM(アルト):「それについては……俺の口からは言えない」
GM:アルトはクラウスのそばによっていきクローディアに祈りをささげます。
GM(アルト):「随分と力を消耗したようだな」と“トランスファー・メンタルパワー”を唱えます。
クラウス:「助かります」
GM(アルト):「俺の分までアンリを守ってやってくれ。よろしく頼む」
クラウス:「ひとつ聞いてもよろしいですか?」
GM(アルト):「答えられることならばな」
クラウス:「ならば、判断していただいて。深淵の力を使うことによって、アンリに何か犠牲を強いることになるのですか?」
GM(アルト):(そういうことは本人に聞いてくれよぉ!(汗))「アンリに限ったことではないだろ? お前たちだって力を振るうには何らかの犠牲を払っているはずだ」
クラウス:「あくまで推測なのですが、大きい力であればあるほどその代償も大きい」
GM(アルト):「道理だな」
クラウス:「先代の御子が居なくなったのは力を解放したせいなのですか?」
GM(アルト):「……」
クラウス:「わかりました。ありがとうございます」
GM(アルト):「アンリはお前たちが来るまでの間、長老から守護者を決めるように長年言われてきたがずっとそれを拒み続けてきた。俺はそれでも構わないと思っていた。だが、お前たちがこの聖域に来て、お前たちと出会ったことによって、アンリは守護者を決める決心をした。それがどういうことなのか……少しでも汲んでやってもらえるとありがたい。あの子のためにも」
こうして一行は十分な休息をとり、次の戦いへと備えるのでした。
アンリがなぜ守護者の決定を拒み続けてきたのか。アンリのプレイヤーにはセッション開始時にその理由を考えておくようにお願いしてありました。王道であればこうだろうなという予測はあったものの、この段階ではGMもその理由を知りません。そんなアンリの秘めた想いを引き出す鍵をウィルたちに渡したくて、このシーンの最後のアルトの台詞となりました。