LOST ウェイトターン制TRPG


聖域の守護者イメージ

聖域の守護者 38.鎮圧

 サディアスとの戦いも終盤。圧倒的な力で押し切ろうとするウィルたち。

アンリ:サディアスに“バルキリー・ジャベリン”を撃ちます。

クラウス:いや、そろそろ補助魔法が切れるので、唱えなおしておいたほうが……。

アンリ:それはわかってるから大丈夫。

クラウス:それならいいんですが……。

GM:(クラウスはウェイトをカウントしていたのか。さすがに魔法使いらしいね。アンリが余裕を見せてスリルを味わいたいなら、その期待にお応えしましょう)。

アンリ:(ころころ)魔力21。

GM:魔法の盾は伊達じゃない! 抵抗成功!

アンリ:(ころころ)20点ダメージ。

GM:それなら、サディアスはまだ倒れません。そして、このタイミングで……“アクティブ・マナ”の効果が消失しました。“フォース・フィールド”の効果が消失しました。“バルキリー・ブレッシング”の効果が消失しました。“ブレス”の効果が消失しました。“シャープネス”の効果が消失しました。“プロテクション”の効果が消失しました。“シャドウ・ボディ”の効果が消失しました。“ファイア・ウェポン”の効果が消失しました。(さすがに多い(笑))。クラウスが戦闘途中で自分に掛けた“シャドウ・ボディ”以外の全魔法が消失しました。

 戦闘開始前の補助魔法詠唱の処理をずさんに済ませてしまったことで、効果時間の終了が同時に発生することになってしまいました。ここに来てまさかのアンリ無防備状態です。

GM:それと同時に、この描写を入れておきましょうかね……。次々にブラック・ナイトたちが倒れていく様を見たオルコット大公が「これでは、もはやかなわぬではないか!」と言って後ろを振り向いて逃亡を開始します。

クラウス:「まずいですね」

 この戦闘が始まってから、攻めてくるサディアスたちに対してウィルたちは完全に受けにまわっていました。しかし、ウィルたちの勝利条件は敵を鎮圧すること。ベネット伯とオルコット大公を抑えて、この聖域侵攻を終結させることだったはずです。ベネット伯とオルコット大公をみすみす取り逃がしてしまう場所で戦い続けたことは失敗だったかもしれません。

 しかし、今となっては後の祭り。それぞれが敵と接敵する状態となり、もはや目の前の敵を倒すことに集中するしかありません。一刻も早くサディアスたちを倒してオルコット大公を追いたいところですが、甲冑に身を包んだ騎士たちはなかなか倒れません。逆に決死の覚悟のサディアスの攻撃が、無防備になったアンリを襲います。

GM(サディアス):アンリに攻撃! 「唸れアイス・ソード!」

アンリ:ディフレクトを試みます。(ころころ)14。

GM:その値じゃとても防ぎきれませんね。どうします? 誰か助けにはいりますか? それとも可能性を使いますか?

 可能性を使うのはありですが、アンリが回避判定を行った後に他のキャラクターが範囲ディフレクトや身代りでかばうことはルールでは認められていません。ここで他のPCからの助けを求めたのはGMのミスです。

クラウス:14でも防げなかったのに、範囲ディフレクトで助けるとか、無理ですよ。身代りになることはできますが、アンリはまだダメージ受けていませんでしたしね。

アンリ:うん、大丈夫。ダメージ頂戴。

GM:それでは、サディアスが剣を振るうとシャリシャリシャリと大気が凍りつき、その凍てつく刃がアンリに襲い掛かります。(うーん、サディアスの火力は低いなぁ)14点ダメージ。

アンリ:それは防ぎきりました。

一同:えっ!?

GM:ちょ、ちょっと待ってください。いくらなんでもそんなことは……。

アンリ:え? だって、冒険者レベルで10点ダメージ防いで、鎧で6点ダメージ防ぐから――

GM:いや、そこは冒険者レベルと鎧の防御力を足して半分にしたものがダメージ減少となるので、アンリのダメージ減少は8点です。

アンリ:え? あ、そうなんだ?

GM:(どうりで補助魔法切れても余裕をみせてると思ったら……)。

アンリ:それじゃ、8点止めて、6点ダメージ受けました。

GM(サディアス):「いける! いけるぞッ! あと一撃!」

クラウス:まずいな……。

 アンリの誤算で、ひょっとするとひょっとする可能性がでてきました。補助魔法の切れたところで高レベルのファイターに隣接されてしまったことにより、もう長時間瞑想して魔法を唱える余裕はありません。もし、ベネット伯とオルコット大公を押さえられていない状態でアンリが死亡するようなことがあると、一気に形勢が逆転する可能性もあります。

 さすがに身の危険を感じたアンリは自分に“キュア・ウーンズ”を唱えようとするのですが、先ほど“アクティブ・マナ”の効果が切れてしまったために、瞑想にウェイト2が必要となってしまいました。そんなアンリに追い討ちをかけるように側面からブラック・ナイトAが襲い掛かります。クラウスが“ウィル・オー・ウィスプ”をぶつけて止めようとするのですが、抵抗されてしまい、殆どダメージを与えられません。

GM:さーて、それではブラック・ナイトAがアンリに攻撃です。側面からの攻撃になりますが、どうしますか?

アンリ:仕方ない。瞑想を中断して方向転換。

GM:それは、サディアスが範囲支配で阻止しようとします。

アンリ:(サディアスの範囲支配に対して)ディフレクトします。(ころころ)11。

GM:横を向こうとしたアンリの目の前にサディアスの剣が突きつけられ、方向転換できませんでした。それでは、あらためてブラック・ナイトAがアンリの側面から攻撃します。

アンリ:回避を試みて(ころころ)9。

GM:さすがにその程度ではブラック・ナイトの攻撃はかわせませんね。13点ダメージです。

アンリ:8点止めて、5点ダメージ受けました。

ゼオル:これは厳しい……。

 この戦闘をイベント戦闘として考えていたGMもこの展開には目が覚めました。とは言っても、いざとなればアンリの横に控えるクラウスが身代りになることが予想されるので、サディアスとブラック・ナイトAにあと二回くらい行動順番が回って来なければ間違いは起こらない状況ではありましたが。

 そして、戦闘の終了が迫ってきたこのタイミングで、密やかに、しかし重要なイベントが発生しました。

GM:では、ここでベネット伯の番ですが、ベネット伯は集落の外、森の端の方に目配せすると、右手を軽く上げて、その手を振り下ろしました。次の瞬間、プンッという矢の放たれた音がして――

ゼオル:あっ!

クラウス:オルコット大公っ!

GM:放たれた矢が、その場から逃げようとしていたオルコット大公の背中にドスッと突き刺さります。14点ダメージ。その場にばたりと倒れこむオルコット大公……。彼の背中に深々と突き刺さった矢はクローネの民が用いているロングレンジ・アローでした。

 まさかのオルコット大公死亡。プレイヤーにはその顛末を描写して伝えましたが、PCは目の前の戦闘に集中していたため、その成り行きを知らないという扱いにしました。そんなイベントが発生する中で、最後の抵抗を見せていたサディアスも主人の後に続こうとしていました。

ウィル:GMに質問なんですが、吹き飛ばし攻撃はダメージを与えずに敵を吹き飛ばすものですか?

GM:いえ、ダメージを与えた上で吹き飛ばします。サディアスに吹き飛ばし攻撃を行って成功すれば、アンリから離脱させることができますね。うまく転倒させることができればかなりおいしいですよ。ただし、筋力ボーナス値を用いた対抗判定に勝てなければ効果はありませんが。

ウィル:では、サディアスに吹き飛ばし攻撃を行います。

GM:それは、側面で受けようかな……いや、さすがにそれはまずいかな……。ここはランダムで……(ころころ)方向転換でウィルの方を向きます。そして盾ディフレクト。

クラウス:それが正解。

ウィル:こちらの攻撃は(ころころ)……あー、また低い。12。

GM:それくらいなら楽勝で……(サディアスのディフレクト値は12)……いや、危ない、こっちも低かったんですが、ギリギリで――

ウィル:あっ、ごめんなさい、13です。守護者になったぶんで+1ついてたんだった。13です。

GM:えっ!? ……それじゃ、ヒットしました……。

一同:これが守護者の力!(笑)

GM:では、まずダメージを。

ウィル:それじゃ……(ころころ)19点ダメージ!

クラウス:それ、生きてるんですか? 心配なんですけど。

GM:……ごめん……えーと、先に筋力ボーナス+2Dで吹き飛ばしの判定を行いましょうか。

ゼオル&クラウス:やっぱりダメだったんじゃん(笑)。

ウィル:(ころころ)7。

GM:それだと、サディアスは吹き飛ばされずにその場で堪えるんですが……。

GM(サディアス):(ニヤリと笑って)「耐えた……ぞ……」

GM:次の瞬間、サディアスはその場に崩れ落ちました。

 ついにサディアスが力尽きました。サディアスと共にアンリに襲い掛かっていたブラック・ナイトAも、クラウスが繰り返し唱える“ウィル・オー・ウィスプ”の前に倒れます。一方で、ゼオルとブラック・ナイトCの一騎打ちはしばらく終わりそうにありませんでした。見ようによっては力と技による見事な勝負です。しかし、そんな見事な戦いを繰り広げる彼らに対し、二人のそばまで走り寄ったウィルが無情の言葉を漏らします。

ウィル:(側面からブラック・ナイトCに攻撃するのは)忍びないんだが……。

ゼオル:助太刀に入るのが騎士道に反するというのなら、ここは俺に任せてベネット伯の方に向かってもいいぞ。

ウィル:いや、とりあえず、この若干泥仕合になった戦いに決着を――

アンリ:この男は本物の騎士になれぬ者たちの戦いを泥仕合と言うか!(笑)

ウィル&クラウス:(爆笑)。

ゼオル:うるさいっ!(笑)

GM:たしかにその発言は酷い。彼らは純粋な騎士になることに憧れていただけなのに……(泣)。

ウィル:いや、たしかに足止めしててくれたのはありがたいんだが、いかんせん……。たぶんこいつが死なないとイベントが進まない(苦笑)。いささか心が痛みますが、ブラック・ナイトCに攻撃を……。(ころころ)16。

GM:側面からの攻撃だったので命中しました。

ウィル:(ころころ)20点ダメージです。

GM:その一撃でブラック・ナイトCも力尽きました……。そして、あなたたちが目の前の敵を倒して前方に目を向けると、オルコット大公が背中に矢を受けて倒れており、強硬派側で立っているのはベネット伯一人となっていました。

 おまけ:戦闘の流れ(Flashで再生されます)




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