LOST ウェイトターン制TRPG


聖域の守護者イメージ

聖域の守護者 余談:第2章

【12.日常】より

「クローネの民の集落」

 セッション参加者にも、そしてリプレイを読んでいる人にも確実に誤解を与えているのではないかと思うのですが、クローネの民の集落はセッション中に登場したエルモ長老のまとめる集落ひとつではなく、聖域内にいくつか点在しています。その中で深淵の力を宿した御子を擁するエルモ長老の集落が最も強い発言権を持っていたというわけです。

 シナリオ制作の初期段階では、セッション中には登場しなかったNPCとして村長が存在し、各集落の長が聖域奥の神殿に集まって行う村長会議のためにしばらく集落を離れていて、アンリは村長が戻ってくるまでに守護者を定めなくてはならないという設定でした。集落同士の対立などの話もあったのですが、プレイ時間短縮のためにあえなくカットされました。

「アンリが頭の中でぽわぽわと考えていると」

 ようこそ、変態の森へ!(笑)

 この段階でGMはアンリがのだめを意識していることを知らなかったのですが、ピンポイントでマッチした描写となっていました。あらためてこのシーンのアンリの台詞を読んでみると見事にのだめの声で再生されます。このシーンだけで言えば、アルト→千秋、アルヴィ→リュカでイメージしてみるとかなりはまってます。「むきゃー!」

【13.接触】より

「クローネの民の装備」

 クローネでは森に暮らす一族として弓術が発達しました。それは民の多くの者がレンジャー技能を取得していることで表されています。そのため、盾を利用する機会はありませんでした。唯一アンリが木の盾を装備しているのはプレイヤーの希望を受けてのことです。聖域の中に迷い込んできた外界の兵士が盾を持っているのを見たアンリがそれを真似て自作した盾を使っていると考えるのが妥当でしょう。

 また、アインやアルトなどはファイター技能も有しています。ですが、クローネの民には刀鍛冶の技術はありません。ではファイターたちは何を武器に戦っているのでしょう? 実は、彼らはクローディアから授けられた武器を代々引き継いで使っているのです。そのため、限られた者しかファイターの訓練を受けていません。アンリがファイター技能を取得しているのは……これまたプレイヤーたっての希望であり、持っているショート・スピアはお手製の石槍でした。

【14.侵攻】より

「初戦闘の勝利条件」

 LOSTではPC側、敵側ともに勝利条件を定めて戦闘しています。このセッションではGM側から勝利条件を提示してしまいましたが、PC側の勝利条件はプレイヤーの判断に任せてしまっても良かったかもしれません。

 さて、このセッションにおいてPC側に提示された勝利条件はすべて戦術的勝利条件となっています。対して強硬派側は戦略的勝利条件を満たすために戦っています。

 この戦闘での敵側の勝利条件は「クローネの民に外界勢力の侵攻を印象付けろ!」から始まり、ゼオルが登場したことで「ゼオルにクローネの民を救わせて信用させろ!」に変化して、敵は見事にそれを達したうえで被害を抑えつつ退却しています。

「行動のヘルプメッセージ」

 このシーンの文章だけ、行動名にカーソルをあわせると……。面倒なのでこれ以降はやめました(笑)。その代わりにおまけとして戦闘の流れをつけました。実はこっちの方がもっと面倒でした(苦笑)。

【16.手紙】より

「ウィルの失言」

 ウィルの失言とはメイのことをカーライル女男爵と呼んでしまったことばかりではありません。クローネの民と初めて顔をあわせたところで「アンリという少女なら話を聞いてくれるかもしれない」と発言したこともいただけません。言いたいことはわかりますが、これでは目の前にいるクローネの民は聞く耳を持ってくれないだろうがという意味合いが含まれてしまい、敵意をあおることになってしまいます。これが名前の呼び方のようにキャラクター性を意図したものであったのか、それともプレイヤーのミスだったのかはわかりませんが、キャラクタープレイにこだわるのであれば細かい言葉運びにも気をつけたいところです。

 GMはこの発言がキャラクター性によるものと判断し、ウィルがクローネの民は排他的であるというイメージを抱いているのだと受け取りました。そして、それは当たり前のように高品質の装備に身を包むウィルらしい考えだと思いました。悪意の伴わない上から目線。それがまたゼオルを苦しめるのです。

「髪飾りの内側に彫られた名前」

 シナリオをつくったときには、髪飾りに彫られた名前はアンリにも読めるつもりでした。ところが、PCたちのやり取りによってアンリはメイのフルネームを知らないということになったので、急遽名前が読めなかったということにしました。後付設定となってしまいましたが、クローネの民が人間の使う文字を使わないということはとても納得できる話なのでそのまま採用することにしました。

「あなたは誰?」

 ここでウィルたちが名乗らなかったためでしょうか、このセッション中、アンリがウィルたちの名前を呼ぶことは終盤までありませんでした。意外な感じがしますが、ウィルとクラウスに対しては名前を呼ぶどころか、個人的に言葉を掛けることすら一度もないのです。

 一見アンリはウィルたちを信頼しているように見えますが、あまりにも急性なその態度から、実はウィルたちをメイの使いとしてしか見ていなかった可能性があります。それどころか、あえて個人的な関わりを持とうとしなかったという気配すら感じさせます。ただし、なにやらゼオルに対してだけは特別な感情が芽生えつつあったことが後半のアンリの台詞からうかがい知れます。

 ところで、このシーンで初めてウィルたちはアンリやアルトと会話したわけですが、ウィルたちがアルトにタメ口――むしろやや上からの発言なのはわざとなのでしょうか? アルトは三十路越えてるんですが(笑)。

【17.拒絶】より

「とぼけるゼオルにニヤリ」

 クローネの民の戦士アインの口から深淵の力という言葉がでてきたところで「深淵の力?」「なるほど。クローネの民には隠しだまがあるってことか」 とゼオルが漏らします。でも、そんなことゼオルは百も承知なわけで、それを知るGMは思わずにやけてしまいました。

「ウィルの説得失敗」

 ウィルの訴え方はとても真に迫るものでした。交渉判定のないシステムであったなら迷わずクローネの民は退避を承諾したに違いありません。キャラクタープレイとしては花丸です。しかし、交渉判定の結果は決裂となってしまいました。実はこの場面、ウィルは金属鎧に身を包んでいることでクローネの民に外界の戦士として見られていたため、外界の3人の中で一番交渉判定にペナルティを受けていたのです。交渉判定の基本値ではクラウスの方が+3も勝っていました。

 ウィルが率先して交渉に臨んだことは、シチュエーション的に致し方なかったかもしれませんが、戦闘シーンに限らず適材適所に応じて役割分担することがロールプレイの本道だと思います。キャラクター性を保ちながらもミッション成功のために最良の選択を選べるように演出するのもTRPGをプレイするうえでのテクニックだと言えるでしょう。

 また、クラウスが交渉判定の引継ぎに躊躇してしまったのは、これまでに経験した多くのセッションにおいて戦闘以外の解決事項をキャラクタープレイ主体の言葉だけで解決してきたことが少なからず影響しているのでしょう。別になりきり演技で見事な演説をしなくても、「クローネの民が納得できるように説得を試みてみました」と言ってダイスロールするだけで、それは立派なロールプレイです。何も自分でロールプレイの幅を狭めてしまう必要はありません。

 とは言いつつも、このシーンで一度交渉が決裂に傾いたことはセッション全体としてみると正解だったと思います。クローネの民が外界の人間に抱く敵意や警戒心の強さを演出できましたし、なによりアンリだけでなくアルトまでもが自らウィルたちに加担したことで、この後ウィルたちと行動を共にしやすくなりました。

【18.説得】より

「いいのかなぁ……いいですよね?」

 GMとアンリの意思のすれ違いが発生しました。このシーンではすれ違いが発生しても問題ありませんでしたが、誤解が発生すると不味いと思ったときにはアイコンタクトで済まさずに口頭や文筆でお互いにしっかり確認したほうがいいですね。

【19.願意】より

「クラウスが持っていた本」

 クラウスが持っていないはずのアイテムを持っていたシリーズ、第二段。クラウスが書きものをすることを見越して、あらかじめ所持品に羊皮紙を持たせていたのですから、できればそれを使って欲しかったところです。

 LOSTに製本が存在するかということで言えば、当然、神の遺産として製本は存在します。しかし、白紙の状態のものが存在するかは疑問です。人間社会では、教会の取り仕切りで製紙術と印刷術が普及しつつあるという設定です。そのため、製本自体は存在するのですが、まだ大量生産体制はとられておらず、本はかなり高価なものとなっています。

 一説によれば十六世紀に活版印刷が普及しはじめた頃は製本ひとつで庶民の一年分の生活費を上回るくらい高価だったそうです。貴族階級や聖職者でなければおいそれと所有できなかったんですね。ただ、本の価格を示す資料として残されているのが貴族などの所有した豪華な本の記録なので、もっと安価な本が存在しなかったかについては疑問が残ります。識字率が低かったために庶民向けの本が存在しなかった可能性は高いですが。なお、LOSTでは神々が人間に字の有用性を教えてくれたおかげか、共通語の識字率は二割を超えるほど高いことになっています。

「クラウスが持っていたダガー」

 クラウスが持っていないはずのアイテムを持っていたシリーズ、第三段。他の持っていないはずのアイテムシリーズは良いですが、これを持ち出すのはストーリー上、明らかに問題でしょう(笑)。しかし、実はクラウスはシーフ技能1レベルを所有しています。アルトを出し抜いて護身用に一本ダガーを忍ばせていた可能性も……。だったらアンリの前でだすなという話もありますが(笑)。

「深淵の力と神の遺産」

 どうもプレイヤーには中盤まで勘違いされていた節があるのですが、「深淵の力」と「神の遺産」は別ものです。セッション中には「深淵の力」のことを「神の力」と呼んでいるときもあり、誤解を招いていたようです。リプレイでは違いがわかるようにわかりやすく修正しています。

「休息と自然回復」

 ソード・ワールドRPGでは、六時間以上の休息をとって夜明けを迎えると、生命点はわずかに回復し、精神点は全回復します。それに比べるとLOSTは生命点の回復量は多く、精神点の回復量は少なくなっています。

 LOSTはダンジョン探索を主目的としたシステムです。連戦が当たり前となるので、本来のソード・ワールドRPGのシステムだと魔法使いは精神点を温存せざるを得なくなり、上手く立ち回らないとあまりやることがなくなってしまいます。それでは魔法使いが不憫なので、瞑想ルールを作りました。これで魔法使いもある程度の連戦に耐えられるようになりました。ちなみに静観も魔法使いを活躍させるためにシステム上の対策として追加した行動オプションです。

 しかし、そうしただけでは単純に魔法使いがパワーアップしただけになってしまいます。瞑想ルールは魔法使いを力押し技能にするために追加したわけではありませんので、バランスをとるために一度消費した精神点は急速に回復しないことにしました。こうしたことで、数日先までの精神点の運用計画を立てて行動することが重要となっています。

 昨今のシティアドベンチャ主体のセッションでは連戦する機会が少なく、それに慣れてしまうと一戦一戦最大消耗で戦う癖がついてしまいますが、LOSTでそれをやると手詰まりになってしまうため注意が必要です。




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