LOST ウェイトターン制TRPG


聖域の守護者イメージ

聖域の守護者 余談:第3章

【20.退避】より

「世界の空気感」

 雨が降り、崖が崩れ、晴天になり、夜間冷え込み、霧が発生し……。冬になれば雪がチラつき、春になれば若葉が芽生え、土の匂いが香る。わたしは世界の空気感を常に意識しています。それに反応したのか、ウィルが川の水かさが増しているだろうことをサラリと口にしてくれているのは嬉しいところです。そういえば大雨による崖崩れの可能性を指摘したのもウィルでした。ウィルはこの世界を肌で感じていてくれたようです。

「東へ、南へ……」

 進行方向を線で記録しておくのは速記マッピングの基本です。――と書いていて、自分がプレイヤーとしてダンジョンシナリオを経験したことが極端に少ないことに気がつきました。リプレイ集やシナリオ集などに掲載されているダンジョンが年々小さくなっているのには寂しさを感じます。キャラクタープレイが推奨されることでプレイ時間などの都合から徐々に追いやられてしまっているのでしょうが、全四部屋の地下迷宮って……。

「アルヴィ捜索の動機」

 アルヴィが行方不明になったときに、アンリはあわてて探しにいこうとします。ウィルがそれを追いかけたのは善行を当たり前のようにする彼の騎士道によるものと考えたいのですが、クラウスとゼオルの二人に関しては保身のために付き合うのだと明言しています。

 GMはこのイベントを短期間でウィルたち三人がクローネの民の信頼を得るためのものと位置づけていたわけですが、動機からしてその路線を外れてしまっていました。その後、率先して動かなかったのもそのせいでしょう。

【21.捜索】より

「1ゾロ10点、6ゾロ50点」

 失敗は成功の母と言いますが、経験をつむという意味では成功を重ねたほうが成長は早いはずです。ソード・ワールドRPGでは自動的失敗してしまった人への救済処置的意味合いも含めて1ゾロを振ったPCに経験点10点を与えているのでしょうが、LOSTでは自動的成功で得られる経験点の方が多くなるようにしています。

【23.強襲】より

「アルトに期待するゼオルとクラウス」

 NPCが活躍するセッションはあまり面白くないのでPCに頑張って欲しいところですが、捜索の動機とあわせて自発性のなさが出てしまいました。クラウスはキャラクター的に適正を判断したうえで他人頼みになるのも理解できますが、せめてクローネの民に恩を売らなくてはならないゼオルには他力本願にならないで欲しかったところでした。

 意図的になのか、結果的になのか、この後もゼオルはステルス潜伏してアンリ無力化の機会をうかがうことになります。しかし、そうするということはゼオルがウィルの能動性を狡猾に利用しているということにもなります。もしかすると思っていた以上にウィルとゼオルの確執は根深かったのかもしれません。もちろん、ただ単純にゼオルが迷っていて行動できていなかっただけという可能性もありますが。

「斥候部隊の勝利条件」

 このときの敵斥候の行動目的は「クローネの民にプレッシャーを掛けること」でした。

 強硬派の騎士としてはクローネの民と小競り合いをする程度のつもりでしたが、いざ遭遇したクローネの民の中に人間の姿を見つけたため、指揮官であるサディアスの命令を思い出し、「自分たちに被害がでない範囲で彼らが活躍してクローネの民に恩が売れるように」行動するのでした。

 ところが、予想に反して身を呈してまでみんなを守ろうとしたのがアンリで、守られたのがウィルだったわけですが(笑)。

「十メートル先もぼやける程の濃霧なのに、二十メートル以上離れた相手に……」

 ……ごめんなさい。

【24.救出】より

「全力で戦うGM」

 わたしは敵の戦力バランスを比較的弱め――正攻法で挑めば問題なく勝てる程度に設定しています。そのかわり、敵の戦闘行動に一切の手抜きはしません。これが逆に、敵の戦闘力は強いのに戦闘行動で手加減されるようだと興醒めです。たとえば高レベルソーサラーなのに戦闘序盤では範囲攻撃魔法を控えるとか、敵の攻撃魔法をPCの一人に集中させないとか……。

 そして、上記戦闘バランスの戦闘を大した回復機会を与えずに三つほど行うことを基本としてシナリオを作っています。こうすることで消耗戦となり、前半の戦闘内容が後半の難易度に影響してくるようになります。プレイヤーたちも自分たちの行動の積み重ねで難易度が上がったのであれば、面白がりはしても理不尽だと思うことはないでしょう。

「“ダークネス”は届かない……」

 遠くまでダークネス系魔法が届くのは、ダンジョンズ&ドラゴンズです。参加者が最もプレイ経験をつんでいたのがダンジョンズ&ドラゴンズであったため、誰も違和感を感じていませんでした。

【25.酒盛】より

「プレイヤーが作り出すシーン」

 これまでGM側から提供するシーンの連続でしたが、話の流れが一段落したところでプレイヤー主導でシーンをつくる機会を用意しました。早速、アンリとウィルが自らシーンを作ってくれました。自然に自らシーンを作れるのはキャラクタープレイを上手く行えているからこそだと思います。そして、ウィルの作り出した酒盛というシチュエーションがまた素晴らしいです。

 モブキャラクターであったアインに光をあてたこと、クローネの民の本音を掘り出したこと、文明レベルの違いをあらためて露出させたこと、特に一番外界の人間への敵意をあらわにしていたアインとの友好を深めたことは重要です。この物語を語る上で欠かせないシーンになりました。

 また、ウィルとゼオルの会話も、その後の展開にリンクする上手い内容になっています。

「葡萄酒、ワインがブランデーに」

 ウィルがアインに葡萄酒を振舞いますが、このシーンの描写内容から推測すると、この葡萄酒はブランデーであるように思えます。ちなみに、ウィルの所持品の中に書かれているのはワイン。ソード・ワールドRPGにはアルコール類のアイテム例としてワインしか紹介されていないですが、旅に持っていくとしたらワインよりはブランデーの方が適しているのではないかと思います。消毒、気づけ、身体を温める、そしてウィルのように交友関係を深めるために用いるなど、ブランデーはとても役に立つアイテムです。

【26.決意】より

「守護者を定めました」

 強硬派の聖域侵攻を止めるための正規兵が数日内に来るだろうと話したウィルたちの言葉を信じて退避してきたはずなのに、それを推したアンリ自身が一番懐疑的です。また、長期的なことを考えたらクローネの民から守護者を選ぶ以外の選択肢はありえず、外界の人間を守護者としようとするのは少し不自然です。

 ちなみに、わたしはこれらの矛盾がキャラクタープレイの破綻によるものだとは思っていません。アンリのプレイヤーが他のキャラクターの名前を頑なに呼ばなかったことも含めて意図してやっていたとしたら、ひとつのラインが見えてかなり深いなと思うのですが、はたしてどうでしょう?

「せめてさいごはご心配をかけぬように」

 この言葉の意味が最後だったのか、最期だったのか……。




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